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速く走るためには「ペダルを重いギアにて速く回すこと」と思っている人もいるとは思いますが、その考えは正しくありません。クロスバイクにたくさんものギアがあるのは、スピードを出すためではありません。ギアは脚にかかる負担と、ペダルの回転を一定にして、疲労せず長く走るのに必要だからです。
人間の脚から出せる力は一定ですが、坂があったり強い向かい風が吹いたりと走行する状況は刻々と変わります。ギアの役割とは変化し続ける状況を、決まっている人間の出力に合わせることです。理想はどんな条件であっても、ペダリングの負荷と回転数は同じに保つようにすることです。それが結果的に「速く・楽に」走れることになります。
クロスバイクを始めたばかりの人は、とにかく重いギアで走ろうとしますが、重いギアで踏むようなペダリングをしたのでは、すぐに疲れてしまいます。
確かに重いギアで走ったほうが、ペダリングしているという実感が大きく運動したような気がするかもしれません。しかし、常に重いギアで走るのと軽いギアから重いギアまで適切なギアで走っても、速さはそこまで変わりません。
重いギアで無理して走ると、脚に疲労物質の乳酸がたまってきます。こうなると筋肉の疲労を感じますし、この状態で長く走り続けることはできません。つまり、全体としての運動量が減ることになります。
他にも、重いギアは筋肉や関節への負担が大きく、筋肉痛や関節痛の原因になる場合もあります。運動量を増やすことだけ考えれば、重いギアで走るより、軽めの適切なギアで、長く走り続けたほうがよいのです。
軽いギアだと、大きな力を使うことはない一方で、重いギアより回転数が多くなるため、運動量が少なくなるわけではないのです。
足に負担をかけずに、毎分60~90回転の範囲内で一定の回転数を維持するのがベスト。上り坂ならもっと少ない回転数で十分。場面に応じてこまめに変速して常に一定の回転数を維持して走りましょう。
変速にはシフターを使いますが、シフターは1種類だけではなく数種のシフターが存在します。クロスバイクはツーフィンガー式のシフターが多く使われています。
シフター形状 | 形式 |
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グリップ式 | グリップを回すだけで変速できるシステム。いたって簡単な操作方法が魅力。シティ車や内装変速に多い。 |
ダウンチューブシフター式 | ダウンチューブにレバーを取り付けられたタイプ。ダブルレバーとも呼ばれる。 |
サムシフター式 | 1本のレバーを左右に回して変速を行うタイプ。親指で押し、人差し指で引く。 |
ツーフィンガー式 | 主に親指と人差し指で操作するタイプ。クロスバイクはこちらが一般的。 |
前後のギアは右と左それぞれに対応して変速ができる。多くは右側のシフターでリア側(リア)、左側のシフターで前側(フロント)の変速が可能です。後ろ側の段数が多いことで分かるように、基本的なギア調整はリア側で行います。
フロント側 | 左シフターを操作するとフロント側のギアが変わる。平地から上り、または下りなどコースが大きく変化したときに使用する。 |
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リア側 | 右シフターを操作するとリア側(後方)のギアが変わる。通常の変速など細かいギア調整はリア側で行う。 |
ギアを一気に変えると足への負担になりますので、徐々に変速することが大切です。基本的には前のギアは一定にしておき、後ろのギアのみを使うようにします。坂の上りや下りで後ろのギアがこれ以上変速できなくなったら前のギアを変えて調節します。
変速はペダルの回転数を一定に保つために行いますが、1分間あたりのペダル回転数の目安というものがあります。それはもちろん初心者と熟練者では大きく違うように人によってその目安は異なりますが、初心者は自分の足の力が70~80パーセント位で余裕を残しながら、1分間に60~90回転の範囲内で一定の回転数を維持することを目安としましょう。
この目安に沿ってペダルを回し、例えば平地を走っていても、疲労や、向かい風を受けてペダルが重いと感じてきたら、ギア比を下げてペダル回転数を一定にできるように練習しましょう。
なお、ロードレースの選手だと1分間に100回転以上ペダルを回しています。ただ、初心者が真似できるものではないですし、無理して100回転させても、それだけで息が切れ筋肉への負担も大きく長時間続けられません。初心者ならばまずは1分間に60回転を目標にしましょう。
平地から登坂に入るときもギア比を下げて、なるべくそれまでの回転数が変わらないようにしましょう。
逆に坂道を下るときは、ペダルの回転が上がって空回りするようだったら、ギア比を高めに設定して、回転を落とすようにします。変速とはペダルの重さを変えるというよりも、ペダルの回転数をできる限り一定に保つために行うものと考えましょう。
もっとも軽いギア | きつい上り坂などで使う。傾斜がゆるくなるにしたがって後ろのギアを変速する。 |
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ちょっと軽めのギア | ゆるやかな上り坂や、向かい風で使う。 |
ちよっと重めのギア | 平坦な場所でゆっくり走ったり、ゆるやかな上りで速く走ったりする場合に使用する。 |
もっとも重いギア | 平坦な場所で速く走ったり、下り坂を走ったりするときに使う。 |
変速のタイミングはペダルが重くならないように、坂や風の状況に応じて行う必要があります。登り坂では早めに変速し、軽く負荷がかかる程度のギアで登るようにすること。クロスバイクのスピードは落ちますが、気にしないこと。理想はペダルが重いと感じる手前でこまめに変速すること。そうすることで足への負担を減らして楽に遠くに走ることができるようになります。
登り坂で重いギアで走っていて、そのまま前のギアを軽くしようとするとチェーンが外れやすいので注意しましょう。チェーンが外れのトラブルを避けるためにも、後ろのギアを真ん中くらいに移してから、前をインナーに落としましょう。
上り坂はスピードが落ちる前にギアを軽くする | 上り坂ではペダルが重くなるので、事前にギアを落とし、上りながら次々と変速する。ペダルを重くしないことが大切。 |
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向かい風のときもギアを軽めに | 風向きを考慮して、自分にとってベストのギアを選択する。向かい風ではペダルが重くなるので、風の強さに応じてギアを落とす。逆に追い風なら、重いギアに変速する。 |
下り坂が終わったらギアを元にもどす | 下り終わってしばらくは慣性で進むが、ペダルが重くなる前に、ギアを軽くする方向にシフトしていき、元の状態にもどす。 |
下り坂になったらギアを重くしていく | 下り坂になるとペダルが軽くなり、軽いギアだと空回りする。そうなる前に、次々と重いギアに変速していく。 |
ペダルを踏み込んでいるとき、チェーンには相当な力がかかっています。強い力がかかった状態で変速すると、チェーンがスプロケットの歯に不自然に引っかかり、シフト機構全体に無用な負荷をかけてしまったり、チェーンが外れてしまったりします。また、ペダルを踏み込みながらの変速は、チェーンに負担がかかり、切れる要因にもなるので要注意です。
これを回避するためには変速の際はペダルへの力を少し抜くことです。慣れるまでは坂道などで徐々にペダルが重くなっていく手前で、体を浮かすようにしてペダルから力を抜きながら変速するという練習を繰り返してみましょう。タイミングについては後述。
これを身につけておくとギアやチェーンを傷めずにすみます。特に、上り坂がきつくなってから変速をしていたのでは、ペダルを踏み込む力が入った状態でチェーンが移動するため。変速は坂がきつくなる前に行うこと。